周恩来と私

「周恩来と私」
熊向暉著
劉俊南訳
出版社: 日本放送出版協会 (1991/10)
ISBN-10: 4-14-008799-4 C1023
ISBN-13: 978-4140087992

 中国国民革命軍(国民党軍)をリサーチしていてたまたま出てきた
本を紹介しておきます。

 舞台は日中戦争から国共内戦の時期の中国。中国共産党の情報戦は
後に中華人民共和国の首相として知られることになる周恩来によって
指揮されていました。その実相を明らかにしたのが、国民党の中枢に
食い込んだ工作員であった熊向暉氏による本書です。
 日本と中国の戦争(日中戦争、抗日戦争)が始まると周恩来によって、
国民党に多くの工作員が送り込まれますが、その中でも特筆する働きを
行ったのが熊向暉氏でした。国民党の指導者である蒋介石が最も信頼
する将軍である胡宗南に見込まれた熊向暉は、1939年にその機密秘書
となりました。胡宗南は当時、共産党の中央機関が存在した延安
(陝西省)方面の司令官で、その延安方面への侵攻作戦は、その機密
情報を扱う担当者であった熊向暉ら工作員の活躍により共産党が常に
先手をとって打ち砕かれることになります。
 特に決定的であったのは、1947年3月の延安侵攻作戦で、その作戦計画
の詳細は熊向暉らによって事前に毛沢東らの共産党中央に伝達されました。
胡宗南(西安綏靖公署主任)は15個旅団の兵力をもって共産党の首都、
延安を攻略し、戦争の行方を決定しようと目論んでいたのです。作戦を
知った共産党中央はこの方面の戦力をすべて彭徳懐(中央軍委副主席兼
総参謀長)の指揮下におき、西北野戦兵団に再編し、共産党軍は大胆にも
戦略的に延安を放棄しました。胡宗南が空城となった延安に入城し、
内外の記者を集めて全世界に向けて共産党の首都の攻略を高らかに宣言
した頃、運動戦に転じた西北野戦兵団は、青化砭、羊馬河、蟠竜鎮に
おいて3回連続で胡宗南軍を撃破し、この戦線での主導権は完全に
共産党のものとなりました。
 熊向暉の情報工作は非常に素晴らしく、戦後、周恩来は「蒋介石の作戦
命令が軍団長のところへ行きつく前に、毛主席がもう先に見ていたのだ」
(同書P.182)と述べています。毛沢東は「この時期における胡宗南の一挙
一動は、ことごとくわれわれによって掌握されていた。これは情報工作の
最も成功した、最も模範的な事例である」(同書P.3)と称賛し、また、
「「敵中にある熊の存在は数個師団にあたる」と激賞し」(同書帯)て
います。

 本書はこのように国共内戦の舞台裏で戦われていた情報戦を扱っている
点、特に共産党側から情報戦を描いているという点、またなぜ国民党は
内戦で共産党に西北戦場において敗退したのかを明らかにしたという点で
貴重です。

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足利義満 消された日本国王

足利義満 消された日本国王(光文社新書339)
小島 毅 著
出版社: 光文社 (2008/2/15)
ISBN-10: 4334034403
ISBN-13: 978-4334034405

 「南北朝の動乱」と同時に読むとよいでしょう。
今谷明氏の「室町の王権 足利義満の王権簒奪計画」を踏まえた
先鋭的、刺激的かつ攻撃的な一冊。脱線が多くて楽しいです。
どういう説かは読んでのお楽しみというところです。
 もっとも所説がすべてなっとくできるわけではありませんので。
自己の判断が問われる本です。
 中国学(儒教史)の専門家である著者による新解釈ですし、
いたるところに喧嘩を売っている節があるので、きっと日本史
専門家やファンからは否定的な意見が出るか無視されることでしょう。

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南北朝の動乱

日本の歴史(9) 南北朝の動乱 (中公文庫)
佐藤 進一著
中央公論新社; 改版版 (2005/01)
ISBN-10: 4122044812
ISBN-13: 978-4122044814

基本的な概説書。
南北朝ではまずはこれという一冊。

または、

戦争の日本史 8 南北朝の動乱
森 茂暁 著
吉川弘文館 (2007/08)
ISBN-10: 4642063188
ISBN-13: 978-4642063180

南北朝時代を概括的にとらえた最新の一書。
観応の擾乱についても一章が割かれています。
ただし、合戦の経過、つまりは軍事上の詳細に重点が
割かれているわけではないので注意下さい。

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モンゴル帝国と長いその後

興亡の世界史 09 モンゴル帝国と長いその後
杉山 正明 著
講談社 (2008/2/19)
ISBN-10: 4062807092
ISBN-13: 978-40628070

杉山先生の最新作!!
いかに歴史(世界史)を認識すべきか、歴史(世界史)は
いかに書かれるべきかが説かれます。杉山節がいたるところで
炸裂し、ファンにはこたえられない必携の一冊です。
ただし、モンゴル関連の事件の詳細な経緯を求めてはいけません。
経緯で最も詳細なのが、ルイ九世(聖王)のエジプトへの十字軍
というところ(モンゴルと関連はあるのだが)がすごいです。
Amazonなら★★★★★(星五つですぅ)。

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